【店舗訪問】NON FLAG(神奈川県小田原市)

過日、高校時代の友人から、「小田原にちょっとクレイジーな服のお店がある」という情報をいただいた。おおよそ地元と呼ぶべきこの「小田原」という土地は、いわずもがな「かまぼこ」で対外的には名を馳せており、相模湾を望む温暖な気候と、箱根や足柄山脈などの立体的な地形の麓として発展してきた土地である。昔から交通の要所として栄え、豊かな海山の食材の恩恵を受けながら今日まで発展してきた。もちろん、北条一族の歴史ある文化も脈々と受け継がれ、小田原城を始めとした歴史的建造物には、今も訪れる人が跡を絶えない。そんなおおよそ「ファッション」とは無縁そうに見える小田原という場所は、たしかに私の記憶する限りでは、そのようなトレンディなものとは縁が遠く、ほそぼそと古着屋や個人商店が点在しているのをいつぞや見かけたことはあるが、しかしながらその程度であった。過日、このお店を訪れるまでは…。

持って行った単焦点カメラ(Fujifilm 35mm F1.4)の悪さが全面に出た写真で申し訳ないが、こちらが今回訪れたお店の入り口である。奥にうっすら商品が見えているが、この温かい趣あるライトが出迎えてくれる。今回のお店がある区画は、小田原でもかなり「ディープ」な地域として知られており 、幾年前、この土地を跋扈したこの私も、足を踏み入れることはなかった場所であった。そんなおおよそファッションというものと対極にある場所にお店を構えるというのであるから、その意気込みも伺え知れるというものである。今回のお店は「NON FLAG」(ノンフラッグ)というストアネームであり、「旗を持たない」という信念を標榜した、気勢溢れるご夫妻が運営されている店舗である。

先程の写真から、カメラの角度を60°くらい上方に構えると、2階の出窓から商品が垣間見えた。意図的なのか、生命力の隆盛なのか、緑が取り囲むようにデコレーションされたレンガ作りの壁面が、これまた素晴らしいコントラストを生み出し、店舗に華を添えている。

初めてお会いするご主人・奥さまと挨拶を交わし、早速店内を見せていただく。なるほど、これは友人が唸るだけのこともあり、さっと目を通すだけでも、お二人のこだわりが伝わってくる。おおよそ華美な思想ではなく、自然体かつ個を持つような商品が所狭しと並んでおり、打ちっぱなしのコンクリートや整然と置かれたキリム柄にも似たラグが良い塩梅である。ご夫妻はお二人とも、元某セレクトショップのバイヤーであったそうで、その後こちらにお店を構えることになったそうだ。正直、出身のセレクトショップを聞くに当たり、これから紹介するブランドのチョイスをされるとは、相当「変わり者」だと見ていたのだが、ご本人たちもその実感はあったそうだ。では、取り扱っているブランドを一部見ていくことにしよう。

まずは、Light Yearsのキルトである。この優しい色使いとパターンが目を引くアイテムである。公式HPによると、インド・パキスタン・モロッコなどのキルトのようで、どうしてもキルトといえば「トルコ」を連想する私には、新しい概念かつ新鮮なデザインでもあった。どこか優しさも垣間見え、特に小さいお子様がいるご家庭などにピッタリだと想像してしまった。

お次はこのタグを見れば、界隈の人には一目瞭然。N. Hollywoodである。このブランドに関する個人的な想い出としては、表参道ヒルズの裏側にある本店まで、それなりの傾斜がある坂を登り、やっと店に着いたと思えば、店内に螺旋階段があり、汗だくで店内を闊歩した記憶がある。そんなことは至極どうでもよいのだが、この小田原で、N. Hollywoodの実物を見れるのだから素晴らしい時代になったものだ。もちろんここの土地は平坦でアクセスも容易である。涼しい顔で商品を見て回れるだろう。

続いて、「Anokhi」というインドのブランド。子供服を中心に展開しており、非常に爽やかな触り心地と、インドの伝統的なテキスタイルを使用しているブランドである。とにかく柄が可愛いし、日本ではなかなかお目にかかれないデザインであることは間違いない。誠に勝手ながら、子ども服=「Petit Bateau」だと考えていた自分の浅はかさを恥じる良い機会でもあった。

サムネイルの写真を見て、読者を釣るためにマルジェラの画像を使っていると思われた方もいるのではないか。いや、断じて騙したわけでもなんでもなく、実際にこの「NON  FLAG」はMaison Margielaを取り扱っているのである。しかも、こちらの写真にあるように、マルジェラ期のエルメスを彷彿とさせるようなコレクションの取り扱いもある。全くもって小田原という土地はすっかり変容してしまったようだ。気さくなご主人とマルジェラについて留まることないトークを繰り広げたが、その熱量を受け止めきれたかわからぬほど、屹立とした信念で取り扱っていることが伺えた。ちなみに、サムネイルのマルジェラは、界隈には馴染みの深い「ハの字ライダース」のホワイトである。ブラックでなくホワイトを取り扱う、この姿勢だけでもただのお店でないことは容易に伝わるのではないか。

お次のブランドは「TUKI(ツキ)」である。日本製の質実剛健なボトムメーカーで、コットンのすべてを知り尽くしたようなクオリティの高いパンツを日々生み出している。「どしんっ」とした重みがあり、それ故にずっと使い込むことのできる製品にはファンも多いと聞く。ここもあまり流行りに媚びている印象もなく、打ち出したいコンセプトやモノ作りを体現しているような意味で、このお店との親和性も高いように感じる。

お次のブランドは「MARNI(マルニ)」である。このブランドも小田原で取り扱っていることがおおよそ奇跡と思えるようなブランドで、マルチカラーを得意としており、特に女性人気が高い。ここには載せきれないのだが、ミニポーチなども展開があり、店内では複数の商品を見ることができるので、ぜひ直接訪れることをおすすめする。

最後の紹介となるブランドは「the inoue brothers…」である。イノウエブラザーズといえば、アルパカの毛を使ったストールやニットがおおよそ世間の知れたところだと思っているが、この写真のイノウエブラザーズは「ランプシェード」である。他にも、サーブプレート(料理皿)なども取り揃えている。もちろん、初めての驚きとしては、イノウエブラザーズのホームカテゴリへの展開がなされていた店であるが、それを店内で売れる環境にあるというご夫妻の人脈も驚きに値するというものだ。実際に、井上兄弟との接触もあるようで(詳細は差し控えるが)、それによって叶っている面もあるようだ。これを見に行くだけでも十分に価値があるし、日常を彩る特別な陶器を探している方にもおすすめである。もちろん、イノウエブラザーズの定番となるアイテムの展開もあるので、ぜひお店を覗いてみてほしい。

他にも幾つかのブランドの取り扱いもあり、全ては載せきれないのだが、詳細については「NON FLAG」のオンラインショップを見ていただけると、おおよその取り扱いが理解できると思う。しかしながら、ご夫妻で経営しながら、「家族」としての営みもしている中、すべてのブランドの掲載や細かい更新が追いつかない面もあるようなので、ぜひ実際に店頭で対話を楽しみながら商品を見ていただくことをおすすめする。このようなご時世の中でも、気鋭を持って服飾文化を創ろうと試みる「NON FLAG」がさらなる活気に包まれることを、傍らの地元民として願ってやまないのである。

住所:〒250-0012 小田原市本町2-11-16
営業時間:
平日 13:00-18:00
休日 12:00-18:00
定休日:月、木曜
※営業時間に変更がある場合は、instagramのストーリーズにて告知いたします。
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